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――生命の維持、確認――
ライは引きずられたまま、無理矢理階段を降ろされていた。
――身体の損傷、大――
一段一段降りる度に頭が段差にぶつけられていたが、痛みは何も感じない。
それは、体に空いた4つの銃創も含めて。
――このままでは、生体活動に支障を来すと思われる――
ゾクゾクと高まる感覚。
研ぎ澄まされていく神経に、ライはこれ以上体の疼きを抑えることは不可能だった。
――カースコードを発動する――
すっとライは腕を伸ばすと、自分を引きずり続けている男の足をぐっと掴む。
「ん?」
男が気付いた時には、バキバキと音をたてて足首が握り潰されていた。
「ぎゃ――」
たまらず男は絶叫をあげようとしたが、それすらも今はままならない。
何故なら、喉元には深々と鋭利な爪が突き立てられていたからだ。
「あ……」
男が最後に見たもの――
闇の中で赤黒く光る獰猛な瞳。
大きく隆起した筋肉を包む、黒い乾いた硬質の皮膚。
いびつな体から生えた両翼に、醜く不格好な顔。
一言で形容するなら、まさに悪魔といったところか。
――その異形のものは、紛れもなく現在のライの姿だった。
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