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醜い体へと変身を遂げたライは、弾かれたように駆け出していく。
耳を澄ませば各フロアから跳ね返ってくる足音で、犯行グループの人数を正確に捉えることができた。
ライは一つ一つのフロアへと飛び込み、次々と恐怖に表情を歪ませる男達を肉塊へと変えていく。
――そして、残すはシエルがいたフロアとなった。
ライは踊り場の、フロアへと入る扉の前で立ち止まる。
研ぎ澄まされた聴覚には、何の音だと男が訝しげに呟いているのが届いていた。
そして近付いてくる、男の足音。
扉が開いた瞬間ライは差し出された腕を掴むと、無理矢理引きずり込んで男をぐちゃぐちゃに潰した。
それはもう、叫ぶ暇も与えない程に。
返り血を全身に浴び、男が元の形状を保っていないことを確かめると、ようやくライはその腕を動かすのを止める。
「ウウウウ……」
ライの大きく開かれた口から、唾液と共に低い唸り声が漏れた。
あとはもう、ライに残されていたことはこの場から逃げることだけだった。
「……ライ、なの?」
しかし、背後から響いたのはシエルの声。
しまった一歩遅かったかと、ライは愕然として動きを止めた。
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