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「……どうして、見たんだ」
返されたのは低く汚いくぐもった声だった。
シエルは何が何だか分からずに、困惑したままライと思われるもの見つめる。
「本当に、ライなの?なら、どうしてそんな姿に……」
「……俺は、リヴォルノの人間だ」
シエルに問い詰められて、ライは静かに話し始めた。
「いや、人間じゃない。化け物だな。リヴォルノの試験管の中で生み出された俺は、幼い頃にウィンダムに送り込まれた。将来、時期が来た時にウィンダムで活動をする工作員としてな」
自嘲気味に語るライだったが、シエルは信じられないと首を横に振る。
「お前の母親に拾われたのは想定外だったがな。そんなことは大した問題ではない。俺はただ、来るべき時を待つだけだった。……そのはずが、お前にこの姿を見られてしまったわけだ」
ライは一歩ずつシエルににじり寄った。
シエルは恐怖で顔をひきつらせ、ピクリとも動かせなくなった視線はそのままに後退りをする。
「やめ……て……。ライ……」
「すまない。任務のためなんだ」
ライは鋭く尖った爪を振り上げた。
シエルの瞳が大きく見開かれ、そこに映った爪はすっと吸い込まれるように振り下ろされた――。
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