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ああ、やってしまったんだなと、ライは茫然と血に染まった醜い両手を見ていた。
全てはやはり、夢の通りに動いたのだと。
ここまで来たらもう後戻りはできないだろうと、ライはひたすらに暴れてフロアの中を荒らしまわった。
少しでも痕跡を消すためだったが、その行為は感情のおもむいた先でもあった。
物が散乱していたフロアを更にぐちゃぐちゃにし終わると、ライは横たわるシエルに目をやった。
かける言葉はない。見てしまった方が悪いのだ。
ライはそう自分に言い聞かせると、窓を突き破り大きく翼をはためかせる。
黒い体は、闇の中に紛れるには丁度良かった。
流れる風を感じながら、ライは月に向かって遠吠えをする。
その声には悲しげな響きが含まれているようだったが、ライの煌々と光る赤い瞳からは涙は出なかった。
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