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シエルが『何者か』に殺された翌日、葬儀はしめやかに行われた。
死因はスキャンの結果裂傷による失血死とされ、司法解剖が行われなかったのはグランツにとってせめてもの幸いだったかもしれない。
だが武装組織に呼び出されシエルの変わり果てた姿を目の当たりにしたグランツは、夕べからずっと塞ぎ込んでいた。
「……父さん」
夜遅く、ようやく家へと帰ってこれたライはリビングにいた。
泣きはらした目を向けて、グランツへと声をかける。
もっとも、その目はライが散々泣く演技をした結果だったのだが。
「……何だよ」
グランツは家につくやいなや浴びるように酒を飲み始めていて、一升瓶から口を離すと低く小さな声で言った。
相当荒れているなと、ライはその口調から判断をする。
「そんなに酒ばっかり飲んでないで、これからのことについて話し――」
ライがそう言いかけた時だった。
「うるせえ!!」
飛んできた空の一升瓶が、ライの額の右側を直撃する。
「つっ……」
ライは声を漏らすと、一升瓶が当たった場所を押さえてうずくまった。
ポタポタと垂れる血により、ライは額が切れたことを知る。
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