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「――ライ、ライ!どうしたの?ライっ!」
ふとライと呼ばれた少年が目を開けた先には、心配そうに肩を揺すってくる女性の姿があった。
「……姉さん」
ライはとぼけた声をあげてから、汗ばんだ体を起こす。
姉の艶やかな長い黒髪が顔にかかっていたのが、鬱陶しかったからだ。
「凄いうなされてたみたいだけど、大丈夫?朝ご飯作ったから起こしに来たんだけと」
そう言ったライの姉――シエルは、心配しているような目でライを見つめる。
ライは荒い息を整えながら頷き、それを見たシエルはそそくさとライの部屋を後にしようとした。
「早く下りてきてね」
「うん」
シエルの言葉に生返事をしたライは、再び体をベッドの上に横たえる。
しかしそれを見透かしていたかのように、シエルは次の瞬間にはライのベッドの元まで再び近付いてきていた。
「……あ」
「だからご飯作ったって言ってるでしょ!」
ライが頭からすっぽり被っていたタオルケットを剥ぎ取るシエル。
夏のためTシャツにトランクス一枚といういでたちで眠っていたライは、さすがにこれにはたまらず飛び起きる。
「や、やめろよ姉さん!兄弟間でもやっていいことと悪いことが――」
「いいから、下らないこと言ってないで早く下りてきなさい。分かったわね?」
いつまでもシエルに子供扱いされるライは、不満げに口を尖らせていた。
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