1.涙

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ライは17歳の少年である。 もっとも、本人はもう大人だと言って聞かないが。 だがめったに櫛を通さない黒いざんばら髪は常にどこかしらハネたりしていて、シエル曰わくそれはガキんちょの証ということだった。 しかし、ライもそれを黙って聞いているわけではない。 反論があった。 ライは今年からこの国、ウィンダムを守る騎士隊の一員になったのだ。 これにより自分は立派な大人だと、ライは胸を張って言うことができたのだ。 「だから姉さん!これからは僕の部屋に勝手に入ることを禁ずる!」 朝食の席で、向かい合わせに座っているシエルにライはビシッと指を突きつけた。 シエルはずずっとスープをすすると、腕を伸ばしてペシっとライの額を叩く。 「何言ってんの。そしたら、あんたの部屋の掃除は誰がするの?ただでさえ騎士に成り立てで忙しいのに」 「うう……、ごめんなさい……」 身の回りのことはシエルに任せっきりのライは、テーブルに突っ伏して謝った。 シエルは自分より3歳年上なだけだが、随分しっかりしているライは思う。 まあ、シエルからすればライがしっかりしなさすぎというところだが。 「まあそんなことはともかく、さっさとご飯食べちゃいなさい。今日は、お母さんの墓参りなんだから」 少しだけ俯きがちにシエルが言ったのを、ライは見逃さなかった。
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