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ライは母親の顔を覚えていない。
厳密に言えば、両親の顔は共に知らないのだが。
ライは幼い頃にウィンダムをさまよっていたところをシエルの母親に拾われて、今までこの家で暮らしてきていた。
しかしその母親はライを拾ってまもなく交通事故に遭い逝ってしまい、それからは父のグランツとシエルに育てられてきたことになる。
そのグランツが騎士であったこともあり、ライは物心ついた時には騎士を目指すと言い始めていた。
そして、その夢はめでたく今年叶ったというわけだ。
「じゃあ、そろそろ行こっか」
昼頃になって、洗濯や掃除などを済ませたのでライに声をかけるシエル。
ちなみに、それまでライは2階の自室でごろんごろんしていた。
墓参りということでグランツからシエルの手伝い等をするよう言われ休みを取ったライだったが、実際のところは役立たずであった。
「分かったよ、姉さん」
ライはベッドから転がり落ちるように降りて、大きく伸びをする。
ライからすればせっかくの休みだし存分に羽を伸ばさねばと、普段から訓練で傷ついている体を休めていたつもりだった。
「じゃ、あんたはバケツとかタワシとか、お墓の掃除用具を持ってきてね」
シエルに命じられて、ライは億劫そうに動きだした。
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