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それから2人はしばらく歩き続け、小高い丘の上にある墓地に到着するとすぐに墓の掃除を始めた。
そんなに豪勢な墓でもないので、掃除自体は念入りにやっても一時間程で終わってしまう。
「さて、あとは父さんの到着を待つだけね」
墓の一角に腰を下ろしながら、シエルは汗ばんだ額を手で拭い街を見下ろしながら言った。
ライもつられて街へと目を向けたが、まず目に飛び込んでくるのは巨大な城である。
「いつ見ても、ビルの中に城が建ってるのには違和感があるなぁ」
苦笑しながらライが言うと、シエルは同意を示すように軽く頷いた。
城というのはウィンダムの象徴でもあり中枢部でもある、王族の居住区である。
ただ居住区とは言ってもそれはごく一部の話で、実際のところ城内には研究施設や騎士隊の寮など、国を運営していく上での様々な機能が集まっている。
その重要性から、ウィンダム城はしばしばウィンダムの心臓と評されていた。
「まあでも、あれが伝統ってものなんでしょ。まさか今さら外装を変えるわけにもいかないだろうし」
シエルはぼんやりと城を眺めながら、そこから仕事を切り上げてやって来るのだろう父の到着をただ待っていた。
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