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「お兄サン達?何してるんですか?」
その言葉と同時に、香織の肌を弄んでいた手が抜けた。
誰か来たんだ…。助かった…。
だが、香織はまだ怖くて目を開けられないでいる。
聴覚だけで、今起きている事態を把握する。
「なんだガキが。てめぇに関係ねぇだろぉが?」
「それが関係あるんですよね。」
ハァ…とため息をつきながら言う。
「それ。俺の下僕なんで。」
そんな事を言うのは…愁しかいない…。
その言葉を聞き、やっと目を開ける。
香織の目の前には、笑顔の愁。
だが、口元の笑みに似合わない冷たい目と雰囲気だった。
「…怖」
助けて貰っている香織が呟いた。
男達も愁の気迫に押されているようだった。
「……はァ?意味わかんね。行くべ」
「あぁ…」
男二人が足早に立ち去った。
「…愁」
香織はヘナヘナとその場に座り込む。
「大丈夫だったか?」
愁の手が香織の頭を撫でる。
「うん…。大丈夫」
強がっていないと、大声で泣き出してしまいそうだった。
「ありがとね♪助けてくれて★もぉ平気っ♪」
スクっと立ち上がって、ピースをする。
「そうか。なら良いんだけどな」
香織が十分嫌な思いをした事も
本当は泣き出してしまいそうな程怖かった事も…
何もかも解っているような、優しい笑顔で微笑む愁。
「じゃぁ愁の家行こっか★」
香織は自分のバッグを振り回しながら歩き始めた。
「あぁ…」
愁も隣に並んで歩きだす。
この時…
あたしは自覚してなかったんだ。
愁に…
ムカついて言葉も出ない程呆れる、このドS男に
恋をしたなんて…。
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