785人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
公園から5分程歩くと、前方にキレイめなマンションが見えてきた。
おっきぃマンションだなぁ…
いつかこんなトコで一人暮ししたいなぁ♪
なんて考えて歩いていると、愁がそのマンションの前で立ち止まった。
それに気付かず歩き続ける香織。
「何処まで行くの?」
愁が2、3㍍先を歩いている香織に声をかける。
「え??」
香織は立ち止まり後ろを振り向く。
「俺んち。ココだよ?」
愁が指を指したのは、先程のマンション。
「……ぇぇぇええええ!!??」
驚きが声にでてしまった。
「置いてくよ?」
そう言うと、愁はスタスタとマンションの中へと入って行く。
慌てて香織も後を追う。
そのままの勢いでエレベーターに乗り込んだ。
チーン…という音と共にエレベーターのドアが閉まる。
「こんな所に住んでたんだねぇ」
香織がポヘーと気の抜けた顔をしながら口を開く。
「凄いねぇ~。何階まであるんだろぉ」
「いつかこんなトコ住みたいなぁ」
等と独り言を言っていると、愁が口を開いた。
「煩い。黙れ」
その言葉と同時に、香織は腰を引き寄せられる。
「!!!???」
香織は驚いて、顔を赤らめながら口をパクパクさせる。
頭は完全にパニック状態だ。
それを見て、愁が
「金魚みたいだな」
と笑った。
「なっ…!?」
香織が反論しようとすると、言葉を付け足される。
「次、騒いだらキスして黙らせるよ?」
その台詞を聞いて香織はそのまま硬直した。
一瞬の沈黙の後、エレベーターが目的の階に到着した事を知らせる音がして、ドアが開く。
香織は足取り重く、エレベーターを後にした。
あたし…無事に帰れるよ…ね?
香織の心の問い掛けは、ドアが閉まる事を告げるエレベーターのお知らせ音と共に消えた。
最初のコメントを投稿しよう!