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香織まだ頬を膨らませて、そっぽを向いたまま愁に質問をする。
「で?何の用だったの?」
「用?あぁ…」
聞かれた愁は少し考え、笑いながら言った。
「なんだっけ」
「…」
チーン…
エレベーターで聞いた様な音が香織の頭に鳴り響いた。
「はぁぁぁぁぁ!?」
今にも愁につかみ掛かりそうな勢いで愁の方に体ごと顔を向けた。
と、今度はそのまま香織が愁を押し倒してしまった。
「あっ…」
「ぃゃん///香織のえっち」
愁が両手で顔を覆う。
「ばっ!!」
香織の顔がみるみる赤くなる。
「それとも何?さっきのでシたくなっちゃった?」
意地悪な笑顔になった愁の大きな手が香織の顔と耳に触れる。
「違っ…!!」
香織はぎゅっと目をつぶり、慌てて反論しようとした。
「冗談だって…ククク…」
香織の眼下には、またも笑いを堪えている愁の姿。
「もぉ!!ホントに何の為に呼んだの!!」
愁を押し倒した時同様、叫んだ勢いで起き上がって座り直した。
「寝れなかったから…かな」
愁も起き上がってソファーにもたれ掛かる。
「は?あんた眠いってあたしにメールしたじゃん…」
香織は訳が解らないといった表情をする。
「眠たいけど寝れねぇんだよ」
半ば呆れた様に、ため息と共に吐き出した。
「だから~。ひざ枕して?」
珍しく甘えた声で『お願い』して、勝手に香織の膝に頭を乗せる。
「ちょっ…」
「うるさい。今いー感じに寝れそう」
…何でコイツはこんなに自分勝手なんだろ…?
「はぁ~…」
香織もため息をつく。
「少しだけだからねっ」
そう言って愁の頭を撫でた頃には、愁の静かな寝息が聞こえていた。
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