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走る。 穏やかな昼休みの学校の廊下を、香織の教室から屋上まで休むことなく、全速力で。 屋上まで、どんなに急いでも約5分。 何故なら、香織の教室は2階の1番端。 一方、最上階が5階の屋上に繋がる階段は真逆の端にある階段のみ。 教室から飛びだして5分後、香織は屋上の扉を勢い良く開けた。 30㍍程離れた場所に、一人の男がフェンスにもたれ掛かって座っている。 耳下までの黒い髪が、心地良い風に流されて涼しそうだ。 顔は口にくわえたタバコが似合う切れ長の目に筋の通った鼻。   その男は、白い肌に映える赤い唇から煙を吐き出しながら言った。 「遅いよ?」 男の顔は笑っているが、オーラが限りなく黒い。   香織はドスドスという擬音が似合いそうな足取りで男の前に立った。 「お そ い よ ?」 男はタバコを押し消しながらもう一度ゆっくりと言う。 それを聞いて香織は… 「3分とか無理ィィィィィィィィィィィッ!!!!!」 香織の声は屋上だけではなく、青空に包まれた街全体に響いた事だろう…。
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