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「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」
息も絶え絶えでその場にへたりこむ。
「走って来た事は偉いね。教室にいたの?」
「ぅ…ん…」
まだ肩で息をしている香織。
男の大きな手の平が、ポン…ポンと頭を撫でる。
「でも俺、待つの嫌いなの知ってるよね?」
「でもッ…」
地面に向いていた香織の顔が、男に向く。
「でも?」
男の手は香織の顔に触れる。
「3分は…無理ッ…」
「ふ~ん…。それで?」
男はまだ笑顔だ。
「だから…ね?3分は無理…」
香織は縋るような目になっている。
「俺はそんな言葉を聞きたいんじゃないよ?」
「ッ…!!」
男の長い指が香織の制服のリボンに触れる。
「愁…ごめんなさいッ…」
……屈辱……。
「よく出来ました」
愁と呼ばれた男の手が、赤いリボンから離れた。
「…で?何か用あったんでしょ?」
香織が乱れた髪を直しながら言った。
「用?あぁ…コーヒー買って来て?ブラックの」
香織の顔から血の気が引いて行く。
「ここ…屋上だよね…?」
香織が呟く。
「ん?うん。」
愁はケータイを開きながら、タバコに火をつける。
「自販機…1階だよね…?
ッテカ愁ココ学校」
「うん。あ。往復だから6分にしてあげる。
だって吸いたいし先生いないし」
目線をケータイから香織に戻す。
「6ッ…!?」
香織が有り得ないという顔とポーズをする。
「あ。ここから飛び降りた方が早いんじゃない?」
まるで、名案を思い付いた子供の様な笑顔がわざとらしい。
「死ぬわぁぁぁぁぁぁ!!!つぅか最初のメールで入れろぉぉぉぉ!!!」
とツッコミを入れ
『行きゃぁいーんだろ行きゃぁ!!!』
そう叫びながら走って行った。
「いってらっしゃい」
愁は満面の笑みで香織を送りだした。
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