7/8
前へ
/346ページ
次へ
「そんな目でみるなよ!」 「哀れんでいるだけだ」 堂々と言われた。 泣きたくなった。 「じゃあ魔法を見せてくれよ!」 「……あんまり得意じゃないんだが」 頭をかきながら狼男が言う。 そして右手を前にだす。 「詠唱ありでいいよな?」 「……ご自由に」 ……風が変わった。 穏やかだった風が急に荒れる。 「一気にいくぞ……」 「ああ……」 狼男の声も鋭くなる。 『我が呼び掛けに応えよ。荒れ狂う焔よ。火球となりてここに集いて全てを焼き焦がせ』 差し出された右手にどこからか炎が集まり火球になっていく。 その間にも風は荒れていく。 『ファイアボルト!』 ピュルルル~パスン 「は?」 気の抜ける音と共に二秒後に霧散した。 「……失敗したのか?」 きいてもいいかよくわからないが……まあきいた方が楽かもしれない。 『我が呼び掛けに応えよ。荒れ狂う焔よ。火球となりてここに集いて全てを焼き焦がせ……ファイアボルト!』 二度目の挑戦。 風が変わらない。 そして狼男の右手に変化はない。 「……夕食にする」 そういって狼男は屋敷に戻っていった。
/346ページ

最初のコメントを投稿しよう!

405人が本棚に入れています
本棚に追加