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「そんな目でみるなよ!」
「哀れんでいるだけだ」
堂々と言われた。
泣きたくなった。
「じゃあ魔法を見せてくれよ!」
「……あんまり得意じゃないんだが」
頭をかきながら狼男が言う。
そして右手を前にだす。
「詠唱ありでいいよな?」
「……ご自由に」
……風が変わった。
穏やかだった風が急に荒れる。
「一気にいくぞ……」
「ああ……」
狼男の声も鋭くなる。
『我が呼び掛けに応えよ。荒れ狂う焔よ。火球となりてここに集いて全てを焼き焦がせ』
差し出された右手にどこからか炎が集まり火球になっていく。
その間にも風は荒れていく。
『ファイアボルト!』
ピュルルル~パスン
「は?」
気の抜ける音と共に二秒後に霧散した。
「……失敗したのか?」
きいてもいいかよくわからないが……まあきいた方が楽かもしれない。
『我が呼び掛けに応えよ。荒れ狂う焔よ。火球となりてここに集いて全てを焼き焦がせ……ファイアボルト!』
二度目の挑戦。
風が変わらない。
そして狼男の右手に変化はない。
「……夕食にする」
そういって狼男は屋敷に戻っていった。
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