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黒い煙を目指してあれから一時間。
「煙が……細くなってる」
火が消えかけているのかもしれない。
急がなければ煙は消え、また途方にくれることになりそうだった。
「まぁ途方にくれてたかも分かんないんだけど……まぁいいか。とりあえず走ろう」
独り言もここまでくると誰か相手がいる錯覚を覚える。
例えそれが錯覚だと分かっていても、相手がいる。
それがなんとなく嬉しかった。
「それ以上先に行けば死ぬぞ」
いきなり低い声がした。
「は……あ?!」
それと同時に体が下へ落ちる。
下には……斜めに切られた竹が見えた。
落ちたら死ぬことは間違いない。体が穴だらけになることも間違いない。
「ッの野郎!」
誰に向かっていったかは分からない。
とにかく必死に抵抗しようとして自然とでた言葉だった。
手と足をおもいっきり伸ばし、体を止めようとした。
……とどかない。
指先がかする程度だ。
「ッの! とどけ!」
必死に抵抗しようとしても無意味だ。
もうすぐで竹槍に到達してしまう。
今更とどいたってもう助からない。
「ち……っくしょ……」
諦めた。
抗ったとしてももう遅い。
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