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「ッ痛!」
尻餅をついた。
体に衝撃がはしる。
上には青空が広がっていた。
「無事に出られて良かったな」
先程の低い声がまたきこえた。
声からして三十路近く、または過ぎた男だと思った。
「一応……無事かな」
体には痛みはなかった。あるとしたら先程の尻餅をした際の痛みだ。
そうだ、お礼を言わなくちゃな。
彼の作った落とし穴で死にかけたとしても命を救ってくれたことには変わりはない。
「ありがとうございます。わざわざ助け……」
……狼がそこにいた。
しっかりと二本足でたち、しっかりと言葉を話している。
毛は金色、目も毛の色と同じ金色で鋭く、目の前の俺をしっかり見据えている。身体は毛皮の上からでも分かるほど筋骨隆々としていた。
ちゃんとズボンも履いている。見た目から判断するに絹で出来ていると思う。
「……なんだよ、人の体をじろじろみて」
「狼……だよな?」
「あ? それがどうかしたか?」
「なんで?」
「は? 意味がわからんのだが」
「なんで狼が話してるんだ? 腹話術?」
「殴られたいか?」
腹話術ではないらしい。
確かにこいつの口から言葉が発せられていた。
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