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「……なあ、もしかして単にあんたがきいたことないだけじゃないのか?」
「かもな」
あっさりとした声だった。
「じゃあ、契約ってなんなんだ? さっきなんかいってただろ」
「本当になんにも知らないんだな」
来たばかりなんだから仕方ない。
諦めてもらう他ない。
「腹へってないか?」
「あ……少しだけだけど。少し」
「なら、村へこい。獲物を運ぶのを手伝え」
「獲物?」
「この猪だよ」
指差したほうをみると、小型車と同じぐらいの大きさをした肌色の猪が転がっていた。たてがみは赤く、長い牙が生えている。
体には無数の刺し傷がついていた。
おそらくは落とし穴に落ちたのだろう。
「これは……?」
「今日の獲物だ。穴からだすの大変だったぞ。なんせ一人だからな」
「一人で穴からだしたのか? 道具は?」
「道具があったら苦労しないさ。ほら運ぶぞ」
「どんくらい重さがあるんだ?」
「人間が十人がかりで運ぶぐらいしかない」
……俺はその人間なんだけど。
「ほら運ぶぞ。そっちをもて」
「あ……おう」
猪の体の下に手をいれて力を込める。
「……そういえばお前人間だったな」
「持ち上がるかぁぁあ!」
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