手術成功、後遺症との戦い

2/2
前へ
/28ページ
次へ
 当日9時間を予定していた手術が始まった。手術室へ向かう際、父は左手を上げて不安を押し殺すように笑顔でいた。しかし手術は予定の時間を過ぎても終わる気配がない。そして15時間後、日付が変わろうかという頃に、ようやく手術が終わった。  「ご心配かけましたが成功しました。」執刀医の言葉に安堵したが、翌日からは麻酔の後遺症による幻覚症状との戦いが待っていた。暴れる父とそれを押さえつける家族との戦いである。  しかし、そんな父も術後1週間ほどで正気を取り戻し、3月に無事退院することができた。退院間近のある日、父の兄が回復した父に対し父の母親が手術前に亡くなっていたことを告げた。その時初めて私は父の涙を見た。父は淋しそうに肩を落としていた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

467人が本棚に入れています
本棚に追加