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8時57分。そのうち父は真上を向き、静かに目を閉じた。同時に肩で息していた呼吸が止まった。赤く腫れていた目の回りがスーッと赤みが引いて綺麗な顔になる。慌てて計測器に目をやると、血圧が計測不能、心電図の波長が弱くなっている。
私は無意識にベッドの側から離れた。先生が診るのに邪魔になると思ったからだ。しかし、一緒に病室にいた先生も看護婦も見守っているだけだ。一瞬よぎった思い。
「このままじゃ…死んじゃうよ!」
しかしすぐに思い出したのだ。「自然の成り行きに任せるって言ったんだっけな…これ以上父を苦しませないために…」
そのうち計測器からブザー音が鳴り響いた。先生が父の側に行き確認を始める。「心音がなくなり…呼吸も停止し…瞳孔も開いています。午後9時7分、死亡確認とさせて頂きます…」
「ありがとうございました!お父さん、よく頑張ったね!」私はそう言い残し、病室を出た。病室から泣きじゃくる母といとこの声が聞こえてくる誰もいないロビーで、私は死に目に会えなかった弟に連絡を入れた…
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