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平成10年12月、その日は定期通院の日だった。父はまだ元気だったため、父の運転する車に一緒に乗り、いつもの大学病院に向かった。
父は私に「じゃあ、悪いけど終わるまで待っててくれよ。」と言い残し、診察室に入った。しかし―一向に父は戻って来ない。そしてやっと扉が開いて出て来たのは看護婦だった。
看護婦が私に言った。「検査の結果、緊急入院してもらうことになりました。病室にご案内しますので来て下さい。」
私は唖然としながらついていくと、病室で不安げな表情でベッドに横たわっている父の姿が目に飛び込んできた。父は自分のことより乗ってきた車の心配をしていた。私はそんなことより自分の体を心配しるよう諭し、それから看護婦と共に入院手続きをした。
これがこれから始まる長い闘病生活のスタートだった。
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