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部活が終わり、春菜は門に寄りかかって待っていた。
敦也「待った?」
春菜「ん~ん♪」
敦也「今日さ、運動公園で寄り道して行かない?」
春菜「賛成♪先生に見付からないようにしなきゃね♪」
運動公園に着くと、先生が懐中電灯を手に持ち、見回りしていた。
今日は終業式ということもあり、見回りなんてしているのだろう。
敦也「やば!懐中電灯持ってるよ!あそこに隠れよ!」
ぞうさんの形をした滑り台の中に2人で入った。
しばらく隠れていると、懐中電灯の光は見えなくなった。
春菜「行ったみたいだね…。」
春菜が敦也の方へ視線を戻すと、敦也は春菜を見つめていた。
真剣な顔だった。
春菜「どうかした…?」
敦也「手貸して…。」
春菜は無言で両手を差し出した。
敦也は春菜の両手を握らせて、握らせた両手の上から敦也の両手をかぶせた。
春菜はドキドキしていた。
敦也もきっとドキドキしていた。
春菜は『好き』という言葉を必要としてたことなんて忘れていた。
敦也の気持ちが十分春菜に届いていた。
春菜と敦也は何も言葉を交わすことなく、ただ手を握り合っていた。
春菜はずっと手元に視線を送っていた。
「春菜…。」
敦也に『春菜』と呼ばれたのは初めてだった。
名前を呼ばれてから、ゆっくり敦也の顔に視線を送った。
「目、つむって…。」
春菜はゆっくり目を閉じた。
敦也の体が近付いてくるのがわかった。
敦也の顔が春菜の顔に近付いてくるのがわかった。
敦也の手がそっと春菜のおでこに触れた。
敦也は春菜の前髪を少しかきあげた。
そして春菜のおでこにそっとキスをした。
それからどのくらい時間が経ったのかは分からない。
「送るよ。」という敦也の言葉で、春菜は現実に戻された。
敦也に手を引かれて、家路を歩いた。
毎日一緒に帰っていた2人だったが、手を繋いで帰るのは今日が初めてだった。
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