第8章

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その夜翔はずっと愛の手を握り締めていた…   普通なら眠い筈なのに全然睡魔は襲って来なかった   2人の出逢い、これまでの経緯、イブの思い出、両親への挨拶など思い付く限り語り掛けていた…   そしてこの事故に対する後悔の念や愛に対する感謝の気持ちと愛する気持ちをずっと語り掛けていた…   もう何時間語り掛けただろうか…   深夜に差し掛かると急に容体が激変していった…   直ぐにドクターを呼び処置を施す   翔はただ愛の手を握り締めて涙を必死に堪える事しか出来なかった   それから数時間後…   両親と翔が見守る中で愛は静かに息を引き取った     それと同時に堪えていた物が堰を切って溢れ出してきた     両親もその場に泣き崩れていた      ゆっくりと朝を迎えて夢であってくれと願うが、それは現実の出来事だった…     その後晴天の中執り行われた葬儀の場には翔の姿もあった     この時、翔は改めて心の底から愛を愛していた事を思い知らされた…   それから翔は愛を思い続けて恋愛は出来ずにいた   それは愛を思う翔なりの罪滅ぼしであり、けじめでもあった   両親はそんな翔の姿を見て、その時は掛ける言葉も見つからなかったのと同時に如何に自分達の娘が翔に愛されていたかを認識したのだった     数年後も翔の罪滅ぼしは続けられていた…   法事への参加や墓参り等欠かさず行っていた     ある年の法事にて翔は両親からこう告げられる…   『君はまだ若い‼愛を思う気持ちは分かるが愛は戻ってこないし、このままだと君が幸せになれるとは到底思えない‼愛は君にそんなことを望んではないだろうし、決して恨んだりはしていないと思う だからこれからは愛の為にも自分の幸せの為に時間を費やしてほしい』     翔の目からは涙が流れていた… そして両親に   『有難うございます』 と一言お礼を言ってその日はこの場を後にした
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