『始まりは雨』

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    駅までは徒歩十分。 俺の根城である2LDKのマンションを目指して脇目も振らずに走る。 雨は強さを増し、瞬く間に俺の服をずぶ濡れにしてくれた。 早く帰らないとカバンの中の書類が心配だ。 …心配だ。 カバンは…… 大丈夫。 まだ中まで染み込んではなさそうだ。 だが、カバンに視線を向けたせいで見えてしまった。 脇の路地裏。 …うっかり見つけてしまった。 喧嘩だ。 見たところ十代の少年が四人。 形勢は三対一で、明らかに片方が不利。 職業柄、止めない訳にはいかない。 「はぁ…」 メンドクセー… 隠すこともせず露骨に溜め息をついて自分に諦めをつけさせ、方向を変える。 「お前ら、何してんだ?」 真っ正面に、俺に背中を向けた男が一人。 それに対峙する男が三人。 三人は俺の位置から顔が見える。 男…というより、ガキ。 それも、見るからに柄の悪そうな。 「ンだテメェ!」 「引っ込んでろや!」 「ぶっ殺すぞ!」 おーおー。 予想通りの反応。 天気予報より解りやすいし当たりやすい。 無駄だとは思うが、一応出しとくか…  
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