『選ばれなかった者』

3/10
前へ
/344ページ
次へ
    「掛けなさい」 部長は命令形でいったが、キツイ言い方ではなかった。 むしろ、優しい言い方。 言われた通り座らせてもらうことにしよう。 部長は椅子に座ったまま、資料を卓上に置いて腕を組む。 ただの癖か何かだろうか。 威圧感は特に感じられない。 「春日君。キャット… こと情報部においては『情報』とは非常に重要な物だ。 それは解るね?」 肯定の意味を込めて頷く。 「ならば、林くんの言いたいことも… 解るね?」 副部長の言いたいこと、か… 確かに、解らないでもない。 言ってることも間違ってはいないし。 注意しなければならない地位にいるのも確かだ。 …確実に嫌われてはいるが、その部分に関しての見解を飲み込み、俺は再び頷いた。 部長を直視できず、オレは少し俯き加減のまま。 「うん。 反省はしているみたいだし、これ以上この件についてとやかく言うつもりは僕はないんだ」 少しだけ、ほっとした。 部長は嘘を吐くタイプとは思えない。 「但し。 罰を二つ受けてもらうよ」 続いた言葉で身が震える。 二つも、か…  
/344ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17550人が本棚に入れています
本棚に追加