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墓参り
夏休み、お盆の墓参りの約束を家族としていたのだが、友人と遊びに夢中で、すっかり忘れていた。
「!」
気が付いたのは夜も相当ふけてからの事だった。
閉店間際の花屋で、
佛花を買い、あたしは霊園に急いだ。
時計をみると、11時をとうに過ぎている。
独り…。
あたし以外にもう訪れる人などいない、街灯も疎らで、しずかな霊園内を、急ぎ足で進む。
途中、慌てていたせいか、ライターを忘れていた事に気が付いた。
「仕方ない。暗がりでも許してもらうしかないわね」
目的の区画に着き、墓をさがす。
「あら?」
ひとつだけ、蝋燭が消えずに燈っている所…。
あたしの家の墓だった。
あたしは、家族の暖かさに感謝して、墓参りを終え、家に帰ってきた。
親に墓参りを報告し、蝋燭に灯が燈っていた事を話すと、
「風が強くて、帰る頃には、蝋燭消えていたのに…。」
首をかしげていた。
たったひとつの墓だけ燈っていた蝋燭…。
風は強くふいていた…。
理屈はいくらでもつくだろうが、不思議な話として、あたしは覚えている。
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