チェーンメール 一章

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すると、携帯の液晶が48分を示す。 カツンカツン。 今は二階と三階の間の踊り場。 何故か設置されている踊り場の大鏡。 それを視界の端に捕えた時、何かを目にした気がした。 髪はセミロングの女性…だろう。 手に蛍光灯を反射させる反射物。 チカッと私の視覚を刺激した。 それを気にせず残りの階段を駆け上がる。 カツン、カツ…ン。 三階廊下。 306と言うことは、奥のほうになるわけだ。 301。 302。 303。 もう、少し。 「ぃ、ぃゃあ゙あぁあぁ゙ぁあぁ゙ああ゙ぁ゙!!!!!!」 悲鳴。 叫び声、なんて綺麗なものではない。 人が狂い泣く声にも。 快楽に達した時のくぐもった声にも。 赤ん坊が泣き叫ぶ声にも。 今までに聞いたどの声にも当てはまらない。 どうにも表しがたい声。 発生地点は、過ぎた部屋からではない。 反射的に止まった足。 止まった地点は、304号室と305号室の間。 声はまだ先の方。 この先にある部屋はあと6部屋。 305号室から310号室。 1階や2階や4階からの声であってほしい。 嫌な考えばかりがよぎる。 駆け出す足。 悲鳴のような声はもう、聞こえない。
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