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「30…6号室…、ここ…だ…」
乱れる息。
前に流れている髪をかきあげながらインターホンを鳴らす。
肩で息をしながら返事を待つ。
来ない。
返事どころか、親さえ出て来ない。
ミクが独り暮らしをしている、なんて話は聞いたことがない。
親がいる筈なのだ。
それが出てこないなんておかしい。
泥棒だと罵られようが、知ったこっちゃない。
クラスメートの危機なのだ。
意を決して玄関を開ける。
ノブを回し、引く。
簡単に開いた。
鍵が掛っていない。
不用心にも程がある。
玄関先には靴が三組。
学校指定のローファーに、サンダルが二足の計三組。
親はいないのだろうか、靴がない。
…って、そんなこと考えてる場合ではない。
「ミク!ミク!!」
サンダルを玄関先で脱ぎながら叫ぶ。
「ミク!私、カレンだよ!!
ミクっ!!返事して!
ミク!!」
お邪魔します、なんて言ってる余裕なんてない。
上がり込み、近場の扉から開けていく。
書斎。
寝室。
トイレ。
風呂、脱衣所。
残る扉は2つ。
1つはガラス張りなのでリビングだと思われる。
もう1つがきっと、ミクの部屋だ。
「ミク!ここなの?!
ねぇ、返事をしてっ!!」
部屋のノブを下げ、引く。
机に、ベッド。
シンプルなクローゼットに、コルクボード。
部屋の中央にある小さな机。
雑誌や教材。
整理された空間。
しかし、普通と違った。
部屋の、家の住人がいないなどという簡単な事ではない。
違うのは、1つ。
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