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さて、ある日のこと、
蜘蛛がいつものように池の底の底にある、地獄を覗いておりますと、
そこには見覚えのある顔がひとつ……。
蜘蛛はその顔を見て、
目に涙を浮かべました。
―そう、今私がこの極楽で幸せに暮らせて居るのは、
まさにあの人間の御陰なのだ―
生前此の蜘蛛は、
幾度か自らの巣から落ちたことが有りました。
その度に、
ある時は蛙がやってきて蜘蛛を食べようとしました。
ある時は、
とうりすがりの人間に踏み潰されそうになりました。
その日も、
蜘蛛は巣から滑り落ち、
一人の人間に、今まさに踏み潰されようとしていました。
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