鼓動~コドウ~K

4/6
5925人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
ドアを開けると…煙草の臭いがした。 窓際に、金髪に派手なピアスをつけた…弟が立っていた。私は荷物を置いて、弟に声をかける。 「来るなら来るって…前もって連絡しなさい」 弟は、悪怯れる様子もなく…私の腕を掴んでソファーに押し倒した。 私の弟は、幼い頃から私の虜だ。飴を与えれば、なんでも言う事を聞く… 私は、気が狂うような甘い飴を与える。 最初から、こんな関係ではなかったが…今はこんな事でも重要だ。 事が終わって、また弟は煙草に火を点ける。そして、笑顔で話し出した。 「さっき、姉さんが出会い系サイトで知り合った男から電話あったよ」 私は、服を着ながら聞き返す。 「で…どうしたの?」 弟は、笑いながら言う。 「二度と、姉さんの前には現われないように…しておいたよ」 私は、三年前に事故で夫と息子を失った。 そして… 手首を切り…後追い自殺をしたが、死ねなかった。 その後は、自暴自棄になり…色々な事をした。 その一つが、売春行為だった。夫の保険金があるので、金にはまったく困らないが…私はとにかく、忘れたくて、忘れたくて… 過ちを犯したが…全て、弟が上手くやってくれた。 「…一ヵ月後、例の島に行くわ。あなたは、その髪を黒くして好青年に化ける用意をしなさい」 弟は、名残惜しそうに鏡を見ながら髪をいじる。 「姉さん…本当に、伝説なんかに頼るのかい?」 私は、ソファーに座り脚を組む。 「まだ、信じてないの?調べはついてるわ。二十四年前の島人集団蒸発事件…あの事件がきっかけで、かなりの数の島人が本土に移り住んだ。その連中からも、しっかり情報を入手した。仮に、何も起こらなかったとしても…他にすがる物なんて、この世には無いわ」 偶然、ネットで知った『蛇神伝説』興味を持った私は徹底的に調べあげた。 そして…希望を見いだす。 私は、人生の全てを賭けて『計画』をたてた。 夫と息子を、蘇らせる計画を…
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!