5926人が本棚に入れています
本棚に追加
ドアを開けると…煙草の臭いがした。
窓際に、金髪に派手なピアスをつけた…弟が立っていた。私は荷物を置いて、弟に声をかける。
「来るなら来るって…前もって連絡しなさい」
弟は、悪怯れる様子もなく…私の腕を掴んでソファーに押し倒した。
私の弟は、幼い頃から私の虜だ。飴を与えれば、なんでも言う事を聞く…
私は、気が狂うような甘い飴を与える。
最初から、こんな関係ではなかったが…今はこんな事でも重要だ。
事が終わって、また弟は煙草に火を点ける。そして、笑顔で話し出した。
「さっき、姉さんが出会い系サイトで知り合った男から電話あったよ」
私は、服を着ながら聞き返す。
「で…どうしたの?」
弟は、笑いながら言う。
「二度と、姉さんの前には現われないように…しておいたよ」
私は、三年前に事故で夫と息子を失った。
そして…
手首を切り…後追い自殺をしたが、死ねなかった。
その後は、自暴自棄になり…色々な事をした。
その一つが、売春行為だった。夫の保険金があるので、金にはまったく困らないが…私はとにかく、忘れたくて、忘れたくて…
過ちを犯したが…全て、弟が上手くやってくれた。
「…一ヵ月後、例の島に行くわ。あなたは、その髪を黒くして好青年に化ける用意をしなさい」
弟は、名残惜しそうに鏡を見ながら髪をいじる。
「姉さん…本当に、伝説なんかに頼るのかい?」
私は、ソファーに座り脚を組む。
「まだ、信じてないの?調べはついてるわ。二十四年前の島人集団蒸発事件…あの事件がきっかけで、かなりの数の島人が本土に移り住んだ。その連中からも、しっかり情報を入手した。仮に、何も起こらなかったとしても…他にすがる物なんて、この世には無いわ」
偶然、ネットで知った『蛇神伝説』興味を持った私は徹底的に調べあげた。
そして…希望を見いだす。
私は、人生の全てを賭けて『計画』をたてた。
夫と息子を、蘇らせる計画を…
最初のコメントを投稿しよう!