第二十六蹴 龍、激昂

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ボールは、ネットでくすぶり続けて、ゆっくりと落ちていった。   慶一は、フィールドに手をつき、天を仰いでいる。   「鷲が龍に負けたか……」  スタンドで見ていた白井は、ぼそりとつぶやいた。   そして、キックオフの笛が鳴り、すぐに試合終了の笛が吹かれた。   慶一は、ゆっくりと力が抜けていくように、フィールドに伏した。   信哉は、それを見て、慶一に近寄る。   「おい。」   「何だよ……」   慶一は、赤みがかった目をこすりながら、顔をあげた。   「また、サッカーやろうな。」   「お前、何言ってんだ?」  「だってよ……お前が居たら、なんか楽しそうだからな。あんなふうに嗅覚がある奴は、初めて見たよ。」  慶一は、目をぱちくりさせて、大きく息をついた。
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