百の月日と、過ぎ去った時間

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九音…まさか、ここに……?   一階への階段を駆け降りる。   「……女らしいぜ…」   「…こわーい……」   「今、職員室の方に…」   通りすがりに聞こえてくる、様々な情報。     もみ合う人。聞こえる、声。     「こらっ!大人しくしろ!」   「せっちゃん、せっちゃん…!」   「九音!」   あの頃とほとんど変わらない、九音の横顔。 暴れないように、抱き寄せて。   「せっちゃん、せっちゃん、せっちゃん……」   焦点の合っていない目で、腕の中で子供のように暴れる。   「九音、九音!…くーちゃん!」   昔の呼び名に、ぴたりと、暴れるのを止め。   「……せっちゃ、ん…?」   焦点を結んでいく瞳は、僕を見つめて。   「くーちゃん……」   「せっちゃん、せっちゃん、せっちゃん!」   二度と離れないように、抱き締めた。
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