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「二ヶ月──‥か」
勇太は屋上のさらに上の屋根で、仰向けで空を見ていた。
まだ授業も始まっていない朝。
早くに来て、教室か屋上で黙想することが日課になってしまった。
虚空をただ見つめ、手は無意識に胸にある小さな赤い石を握り締めていた。
「18になったぞ、俺」
頭の中にいる、黒髪灼眼の少女へ語りかける。
泣いている。
「半袖になった……」
赤い石と一緒に、シャツを握り締める手に力がこもった。
その顔は、今にも泣きそうで歪んでいる。
考えるまい、と目を閉じた。
運が良ければ、笑った顔が思い出せるかもしれない。
(て、運が良かった試しがねぇくせに)
“──‥‥‥‥タ‥”
「!!」
その瞬間、
勇太は目を大きく見開き、バッと飛び起きて辺りを見渡した!
「?」
暑いせいでなく、汗が額から伝い落ちる。
腕についた、リストバンドの下の腕輪に無意識に手が触れた。
が、何も起こらない。
「気の──‥」
せい?
そう、深く息を吐いていると
「ゆうた!」
「は?!」
真上から、突如現れた男、中島裕之。
「だぁぁっ!?」
勇太は見事にその場で潰された。
当の裕之は見事に着地。
無駄にキメポーズをして、意気揚々とその場からどく。
「……ヒロ」
ゆっくりと勇太が起き上がり、『転移』してきた灼眼の友人を睨んだ。
笑って手を合わせてくるこの眼鏡。
「ワリーワリー!」
「校内で──‥!」
「不可抗力だ!! お前、オレの気持ちが解るか?!」
「わからん!!」
灼眼メガネは胸を張って叫んだが、キッパリ言い切った勇太に「あ、そう」と少し寂しげに背中を向けた。
「……いや、オレなんてまだマシだ‥‥毎学期、ツワモノたちはコレに耐えていたんだな……ノリなんて──‥」
「?」
その場に膝をつけた裕之が遠い目をしているのが、なんだかおかしかった。
「ノリが?」
「脱がされてた‥」
「……」
意味が分かった。
一位が則久で二位が裕之だったアレだ。
勇太の顔から苦笑という文字が伺える。
「お前、教室にいなくて正解だったぞ‥」
「‥そんなにひどい?」
「なんか……ゲハゲハ笑いながら脱がしてた‥」
状況がイマイチ理解出来ないぶん、返ってゾッとした。
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