最後の夏

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江夏が終わり、七番の亀田が右打席に入る。 大矢は亀田に対しても丁寧にコーナーを突いていき、最後は外のボール気味のスライダーを打たせてセカンドゴロに仕留めた。 二者連続で内野ゴロを打たせ、大矢も本来の調子が出てきたようだ。 (やはり大矢は堅い守備があって活かされるピッチャー。ウチは守備だけなら県内でも上位レベルと言えるぐらい鍛えてるし、大矢のピッチングスタイルとの相性はバッチリだ。さすがに上位ランクの相手には厳しいが、高代同様に中堅クラスの高校相手なら通用する。二番手投手として十分な戦力だ) らしいピッチングで江夏や亀田を打ち取ってる大矢を見て、村山はちょっと満足気な顔をする。 (さぁ大矢、真剣勝負だ!) 続いては大矢と部内で一番親交のある杉本が左打席に入った。 (・・・負けないぞ!) 大矢も一番の友との勝負に、笑みを浮かべて闘志を燃やす。 そして大矢は自信のあるツーシームを中心に攻め、杉本は上手く対応できずに引っ掛けてしまう。 打球は三遊間へ勢いのないゴロが転がっていき、サードの木田が前進して素早く捌き一塁へ送球。 サードゴロに仕留めて、仲良し二人の勝負は大矢が勝利した。 続く九番の星野も外のツーシームを打たせてファーストゴロに仕留め、これで四者連続アウト。 そんな上り調子の大矢の前に、次に打席に入るのは村山の前でなんとか打撃をアピールしたい定岡。 高代との勝負では変化球攻めに屈して凡退し、残るチャンスは大矢と次郎相手の二回。 正直、次郎相手に打つのは厳しいと定岡自身も分かっているので、大矢との対決が実質アピールのラストチャンスである。 というのもあって、定岡は追い詰められたような気分で右打席へ向かった。 (・・・定岡) マウンドの大矢は、そんな切羽詰まったような表情の定岡を見て、なんとなくだが心情を察する。 (確か変化球が苦手なんだよな。さっき高代の時もストレート一本待ちしてたし。一球ぐらい真っ直ぐで勝負してあげた方がいいんだろうか・・・) 後輩というのもあって大矢はちょっと同情してしまい、先輩としてサービスしてあげるべきかどうか悩ましく思った。
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