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「・・・テメェ!何いきなり変なこといいやがる!」
西本に対しとてつもない暴言を吐かれ、江夏は怒りの形相で青年の胸ぐらを掴む。
「ちょっ、仁!暴力はマズイよ!」
危険を感じた城之内は、慌てて二人の間に入って、亀田とともに力づくで二人を引き離す。
「事実だろ?川上塁を殺したのは高中シニアの監督、チームメイト、そして親友だった西本龍だ」
青年は川上塁の名前を口にすると同時に、犯罪者を見るような目で西本らを見る。
その名前を出された西本ら四人は、動揺を隠せず驚いていた。
「お前、塁のいったいなんなんだ?」
少なからず関係者ということは分かるが、詳しい関係性が分からないので、江夏は未だ動揺した声で尋ねる。
「俺は川上塁の従兄弟の榎本 飛隆。川上塁を・・・塁兄を・・・本当の兄のように慕ってた。だから塁兄を自殺に追い遣ったアンタを、俺は絶対に許さない!」
川上の従兄弟を名乗る榎本は、眉間に皺を寄せてギロっとした目つきで西本を睨む。
榎本はスラっとした体型で、身長は西本と変わらないぐらい、黒髪短髪マッシュの七三分けで、わりかし顔の整ったダミ声の高校二年だ。
「それに塁兄から野球を奪って殺したくせに、気にもせずのうのうと野球を続けてることに対しても本当に腹が立つ!」
相当な怒りを込めて榎本は言い放ち、最後は歯を強く噛み締めて両方の拳を力いっぱい握りしめ、今にも殴りかかりそうな雰囲気を醸し出す。
「・・・お前みたいな奴に、野球をやってほしくない!」
憎しみと怒りのあまり、榎本は目にうっすら涙を浮かべながら吐き捨てた。
心からの憎しみをぶつけられた西本は返す言葉もなく、青ざめた顔で動揺したまま固まっている。
「・・・ざけんなよテメェ!さっきから黙って聞いてりゃなんだよ!?龍が塁を殺しただぁ?その上でのうのうと野球をやってるだぁ?ふざけんなよ!そんなわけねぇだろ!」
身勝手な言い分で言葉の暴力を振るってくる榎本に、江夏は我慢の限界を迎えてブチ切れ、再び榎本の胸ぐらを掴んで顔を詰めて大声で言う。
「龍は龍なりにいっぱい苦しんで、もがいて、いろんなもん背負いながらここまでやってきたんだ!なんにも知らねぇ奴が舐めた口きいてんじゃねぇぞ!」
今にも鼻と鼻がぶつかりそうなくらいの至近距離で、江夏も榎本に負けないぐらいの怖い形相で言い返したのだった。
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