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「ちょっと仁、気持ちは分かるけどダメだって!」
再び城之内は江夏と榎本の間に入って、亀田と協力して二人を引き離す。
「人殺しがこれまでどう思ってきたなんて関係ない。殺した事実は変わらないし、俺の憎しみは何一つ消えない」
榎本は江夏のせいで乱れた首元付近を整えながら、言葉の最後らへんは殺意を込めて言う。
「・・・ッ!テメェこの野郎!」
江夏はもう一度榎本に詰め寄ろうとしたが、今回は城之内と亀田に体を抑えられており、思うように身動きが取れなかった。
「だったらこっちも言わせてもらうけどな、お前がどう思ってようが俺らにとっても知ったこっちゃねぇんだよ!塁の件については、もう俺らなりに方が付いてんだ!今さら周りにとやかく言われたくねぇ!」
体を抑えられながらも、江夏は可能な限り前のめりになって、唾が飛ぶ勢いで榎本に言い放つ。
「・・・方が付いてる?どこまでもふざけた奴だ。だったらこうしろ。次のウチと栄光学院の試合、俺ら桐瓔商業が勝ったら、西本、お前は今すぐ野球を辞めろ。そして金輪際、野球関連に携わるな」
兎にも角にも、西本には野球をやってほしくない榎本は最終手段へと出た。
「当然俺が負けたら、俺が野球を辞める。こんな奴がいるチームに負けるんならば、野球をやる資格すらないし、そんな自分が許せない」
自分の野球人生を賭けてでも、榎本は西本を潰しにかかる。
「はっ?負けたら野球を辞めろだ?くっだらねぇ!なんでそんな勝負受けなきゃならねぇんだよ!やるわけねぇだろそんなもん!」
西本らにとって勝負を受けるメリットがなにもないので、江夏が代表してぶっきらぼうに拒否する。
「ハァ、さっきからお前はキャンキャンうるさいな。仁とか言ったか?俺はお前じゃなくて西本に言ってるんだ。・・・受けろよ西本。逃げんじゃねぇぞ」
榎本は出しゃばってくる江夏に呆れながら挑発的に返し、続いて西本の目を見て威圧的に言うと、有無を言わせぬまま背を向けて歩き出す。
本当はトイレに来たのだが、西本と出会ったことによって、最初の目的などとうに忘れていた。
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