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「・・・うん。それは俺も薄々思ってた」
さすがに長い付き合いなだけに、江夏だけでなく城之内もそれは考えていた。
「俺も」
亀田も同様に、西本がとりそうな行動は予想がつく。
「龍のことだし、仮に俺らがなに言ったところで結論は変えないよね」
西本が他人の言葉で簡単に動く人間でないというのは分かりきっているので、城之内はこれといった策が思いつかず下を向いた。
「これといった策がねぇ以上、試合に勝つしかねぇってこった!俺ら三人がバカスカ打って点取って、勝てばなんの問題もねぇ!」
難しく考えるのが苦手な江夏は、負けた時のことは考えず勝利だけを考える。
「そりゃそうだけど・・・」
勝てば万々歳だが、相手は埼玉ベスト8の強豪なので、城之内は不安しかなく声が小さくなる。
「先発は尾崎だし、そこまで点取られることはねぇだろ。問題は打つ方だ。相手がどんなピッチャーかは分からねぇけど、俺ら三人が中心となってやるしかねぇ!龍の為に、なにがなんでも向こうより多くの点を取る!」
"勝つ"以外の道は残されていないので、江夏は左拳を握って力強く言う。
「そうだな。やるしかねぇんだよな!」
亀田も両方の拳を握って闘志をみなぎらせる。
「この件は尾崎たちにも共有した方がいいのかな?その方が勝てる確率も上がる気がするけど」
この出来事をチーム全員に話すべきなのか、城之内は疑問に思いながら呟く。
「いや、変にプレッシャーをかけちまうだろうし、龍が言わないなら俺らも黙っていた方がいい。他の奴らは伸び伸びとやった方がいいだろうし、この件に関しては俺らだけで背負っとくぞ」
城之内の意見に対し、すぐさま江夏は反対する。
「確かに・・・それもそうだね」
城之内も江夏の言い分に納得して頷く。
「そんじゃまあ、次の試合、いつも以上に気合い入れてこうぜ。絶対に勝つ!」
「「オーッ!」」
江夏は真剣な顔で言いながら右手を出すと、城之内と亀田は同じく手を出して重ねて、大きな声を出して気を引き締めるのだった。
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