最後の夏

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大矢と城之内の対決は、城之内に軍配が上がる。 (いいヒットだ。去年の城之内だったら、今のは江川に捕られていたかもしれん。筋肉をつけて打球速度が上がったことで、今のようなヒットが生まれたと言っていい) ジッと見ていた村山は、城之内の成長が見て取れたので嬉しそうに笑みを浮かべた。 城之内が終わって、打席には三番の木田が入る。 (ここからウチのクリーンナップ。どこ投げても打たれる気がするなぁ。とにかく低め中心、引っ掛けてくれることを祈るしかない!) 中軸に対してマトモにやっても抑えられる気がしない大矢は、相手が打ち損じてくれることを願って、コントロール重視で低めに球を放っていく。 しかし木田には外角低めのスライダーをライト前に運ばれ、続く西本には内角低めのツーシームを左中間へ弾き返された。 そして次郎にも真ん中低めのツーシームをレフト線に運ばれ、クリーンナップに三連打を浴び完全敗北。 分かりきっていたことだが、何一つ自分の球が通用せず大矢は渋い表情を見せる。 (大矢には悪いが、あの三人には打ってもらわんと・・・。清原攻略もあの三人が鍵となるんだから) 水徳一高戦を前にしっかり結果を出している中軸三人を見て、村山はとりあえず一安心だ。 「ヨッシャ俺ももう一本!」 高代からヒットを打っている江夏は、気分良く左打席に入ってバットを構える。 (クリーンナップは仕方ない。大事なのはここから・・・!) 大矢は気持ちを切り替え、抑えられそうなバッターに全力を注ぐ。 集中力を切らさず、江夏に対して徹底的にコーナーを攻めていき、最後は外角のツーシームを打たせる。 見事に芯を外し引っ掛けさせて、打球はセンター方向ショート寄りへのゴロとなり、西本が追いつき軽快に捌いてアウト。 「ク〜!」 江夏は歯を強く噛み締め、悔しそうにしながら下がっていく。 大矢はようやく二個目のアウトが取れて、ちょっとだけ安心したような顔を見せた。
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