1180人が本棚に入れています
本棚に追加
/2631ページ
次の登板に備えて、三塁ベンチ前でウォーミングアップをしている次郎は、そんな迷った表情をしている大矢を見て、同じ投手として今なにを考えているのか察しがついた。
「大矢!マウンドの上で迷いは禁物だ!自分のベストな投球をすることを第一に考えろ!」
次郎はウォーミングアップを止めて、大矢に向かって大きな声で言う。
(・・・そうだよな。人の心配なんかしてる場合じゃない。目の前のバッターを打ち取ることに全力を尽くす!)
大矢は次郎の声にビックリするも、そのメッセージはしっかりと伝わり、大矢は余計なことは考えず己の投球だけに集中する。
そして定岡に対し、ストレートは見せ球にしてスライダーとカーブでカウントを組み立て、最後は外いっぱいのスライダーで勝負にいき、定岡はバットに当てはしたものの、勢いのないファーストゴロとなってアウト。
「クッソ!」
またもや変化球攻めに屈してしまった定岡は、悔しそうにバットを地面に叩きつける。
(やはり変化球は打てんな。一回戦、スタメンから外して正解だな)
予想通りに凡退している定岡を見て、村山は自分の判断は間違ってなかったと再認識したのだった。
定岡が終わり、大矢と対するラストバッターは高代。
大矢は最後の最後まで気を抜かず、高代に対しても丁寧に攻めていき、セカンドゴロに打ち取って終了。
何度か好守備に助けられたのもあるが、11人に対して被安打4という上々の結果で大矢は終えた。
(高代といい大矢といい、期待以上の出来だった。二人とも戦力となってくれるだろう)
村山としては二人とも十分な結果を出してくれたので、まさにご満悦という感じだった。
高代と大矢が終わり、最後に登場するはエース。
(さて、いくか)
自分の番を待ってましたというような笑みを浮かべ、次郎はゆっくりとマウンドへ向かっていった。
最初のコメントを投稿しよう!