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『‥いえ,何でも‥ありません‥』
‥ここまで優しくしてくれて,面倒をみてもらって‥この人にあまり心配をかける訳にはいかない‥
そう思えば,寂しさなどは打ち消し無理に笑顔を作ってみせるのだがどうも引きつってしまう。
そんな様子を総司は見逃さなかった。が,かと言って問いただすこともしなかった。
ただ暫く黙って考えた後,
『散歩に行きませんか』
と明るい笑顔で笑いかけては返事に戸惑うりょうを連れ出したのだった。
屯所を出る際,門番の平隊士に
『沖田先生‥ッ!また大小差さずに街へ‥土方副長がうるさいですよッ!?』
と声を荒げて止められたが,無邪気に笑って門番に手を振れば,りょうの手を引き駆けて行く。
その隊長に連れられた見慣れない女の姿を,門番は唖然と,その二人の姿が見えなくなるまで見送った。
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