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「吉之助(きちのすけ)さん、また失踪するつもりですか。それに」ベランダの窓を閉め、階下の店へと階段を下りながら「僕は『隆登(りゅうと)』、ルートじゃありませんってば。何十年一緒に居れば、覚えてくれるんですか」
店の窓辺にたたずむ不恰好でツギハギだらけの黒猫のヌイグルミが、そのキュートで無表情な顔を僕に向けると喋りだした。
「『ルート』ト呼ンデオル。ソレヨリ、サッサト窓ヲ開ケテクレ」
「はいはい」
彼に逆らう気もなくて、素直に窓を開け放つ。
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