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芽の出ない小説家が、右拳でカウンターを叩きつけた。
「くそっ!」
それを見て、右のこめかみに指をあて、体をボトル棚にもたれかけていたマスターが思わず怒鳴る。
「おい、何やってるんだ?
暴れるために酒を飲むなら、ガソリンでも飲んでおけ。
酒が可哀相だ」
「何で俺は売れない?
いつまで、こんなところで張り付いていなければならないんだ?」
「質問は1つにしてくれ。
2つもいっぺんに答えられないよ」
男がピシャリと音を鳴らしながら、自分の額に右の手の平を置いた。
そのまま顔を上から下に撫でると、力が抜けたようにだらりと顎から垂れるように手を降ろした。
そして両肘をついて、カウンターにがっくりとうなだれた。
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