恋に、墜ちる。

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  ❤ ❤ ❤ 待つ、とか、時間を守るとか、そういうのは、嫌いだ。 自慢じゃないが、基本的に待ち合わせ時間は守らない主義だ。 だから、この春からのバス通が、苦痛でしょうがなかった。 彼女に出会うまでは。 彼女は、同じ制服の女の子やらおじさんやらが並ぶバス停の いつも3番目に立っていて、 俺は彼女に会うため、 7時36分 バス停に立つ。 彼女と出会ったのはこのバス停で、 忘れもしない入学早々、桜祭りの開催時期 まだ緊張感を持っていた俺がバス停に並んでいた時 対岸右側から友達と二人でやってきた。 市立第二女子高の制服を着ていて、 ショートヘアがやたら似合うと思った。 瞬間 彼女と目が合った。 すごく黒目が綺麗な二重で 線が細くて折れそうで 目が離せなかった。 彼女はすぐに 何事もなかったかのように視線を反らし、 友達と会話を始めた。 気付くと俺は 口をぽかんと開けていた状態で さぞかし馬鹿面だったに違いない。 いや、そりゃ彼女の一人や二人、中学でいたし、 「ねぇねぇ、いつも会うよね。二校の子でしょ?何年生?俺は直樹ってゆーの。よかったらメアド教えてよ」 くらい、話し掛けたい、男として。 けれど彼女は片側二車線の対岸の人。 二人の間にはなんの接点もなく 彼女の帰宅と俺の帰宅時間が一緒になったこともなく 唯一彼女と繋がるのはこのバス停。 なんとなく気になってから、3ヶ月。 彼女と視線が合うことが増えた。 けれど、なんでだろう。 それは、愛しくてたまらないと言うよりは むしろあまりにもまっすぐな視線で 彼女が俺をなんらかの形で意識しているのは明らかなれど なんだか素直に喜べない。 それでも彼女の瞳に 今、この瞬間、 自分が存在してるのかと思うと 心が震えて 体が熱くなる。 朝、バスに乗ると、先に乗ってる翔に、 俺はそんな話をする。 翔は笑って 「声、かければいいじゃん」 と簡単に言う。 「いや、それができれば苦労ないって。俺も大人になったっつーか、慎み深くなったっつーか・・・」 「あ、そう」 毎日しつこく話してるせいか 駿は最近俺の切ない恋バナを受けながしやがる。 そして、瞳を細め 彼女達を、バスの窓越しに見つめる。 本当は俺より 翔の方がツラい恋をしてると知ってた。 翔は、俺と彼女よりもさらに何の接点もない、 彼女の隣に立つ、 眼鏡ちゃんに惚れていた。
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