恋に、墜ちる。

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  ❤ ❤ ❤ 彼の視線に気付いたのは、もう3ヶ月も前のこと。 一瞬目が合って、 その時は気にも止めなかった。 実花が彼を熱い眼差しで見つめていることに気付いたのは、 それから間もなくのこと。 実花は今時珍しいほどに正直な子で 思い遣りのある子で 一番の親友でもある。 あたしたちは幼稚園からのお付きあいで 隠し事なんてなく、生きてきた。 だから、彼女が彼への気持をあたしに言わなかったことが なんだか情けなくもあり 歯がゆくもあったけど 同時にそれだけ軽々しく口にできない想いなんだなぁって思ったから あたしは何も言わない。 言えない。 7時36分 彼がバス停に駆けてくる。 すると、今まであたしの方を向いていた実花が 急に対岸を意識しはじめる。 可愛らしい眼鏡の奥の瞳は 遠慮がちに彼を見つめたり 時々視線を自然な形で反らしたりしながら 彼に悟られないよう最善を尽して でも、全身で彼を感じようとしているのが あたしにはよく分かる。 あたしの話なんか、上の空。 あたしの心臓は穴があいたように切ない痛みを訴え 対岸の彼を真っ直ぐに見据える。 彼はあたしと視線が合うと 時々慌てたり 時々見つめかえしたり 時々視線を反らしたりする。 彼が意識してるのが 実花じゃなくてあたしだということくらい あの様子を見ていたら 小学生だって分かるよ。 部活でもしてるのだろうか? 日に焼けた黒い肌。 ふわふわの茶色い髪の毛。 共学の、四校の夏服のシャツはだらしなく着こなされ。 実花 あんた、こんなやつがいいの? あたしは声に出したいそんな気持を 無言の視線に載せて、彼に向ける。 もし本当に素敵な人だったら あたしだって応援する。 けど、彼が実花にふさわしいなんて あたしには思えない。
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