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❤ ❤ ❤
「実花、もぅ帰る?」
終業式が終わって、帰り支度をしていたら、
佳苗が2組に入ってきた。
「うん、今日は帰りに美容院行こうと思ってて。佳苗は?部活?」
「夏休みっては言うけど、結局明日から一週間、補講でしょ?今日くらいはって、バド部は休みなの。帰るなら、一緒に帰ろうかと思って寄ってみたんだけど」
「そぅなんだ、せっかくなのに、ごめんね」
「別に約束してたわけじゃないし、謝るとこじゃないから、そこ」
佳苗は、じゃあ、また明日の朝ね、と
笑って、教室を出た。
「ねぇ、実花と3組の佳苗ちゃんって、いつも思うけど、仲がいいよね」
隣の席の真知子が、話しかけてきた。
「幼稚園から一緒なの」
「そぅなんだぁ。中学一緒っては聞いてたけど。幼馴染みってやつ?」
「そぅ、幼馴染みってやつ」
あたしは笑って返した。
真知子は、でもさぁ、と話を続ける。
「佳苗ちゃんって、すごく美人だよね。背も高いし、なんか綺麗だし、モデルさんみたい」
そうなのだ。
あたしの自慢の親友は、
あたしの悩みの種でもある。
ちびで取り柄のないあたしは、
背が高くてスポーツも勉強もこなす、
美人の佳苗と、よく比較される。
佳苗はそんな自分の素敵な個性を、
全く鼻にかけることもなく、
あたしを一人の友達として扱ってくれるだけに、
そんな佳苗と自分を比較して
余計、自分が駄目に思えてしまう。
美容院で、いつも髪を切ってくれるお姉さんにそんな話をしたら、
「実花ちゃんも、とっても素敵だと思うけどな」
と、言ってくれた。
「そぅでしょうか。自分では、全然そうは思えないんですよ。佳苗はとても素敵な子なんですもん」
「実花ちゃんには実花ちゃんの、個性が光っていると思うけどなぁ。例えば、親友に嫉妬しちゃうような気持ちさえ、正直に言える素直なとことか、ふわふわしててかわいらしい雰囲気とか。あたしは好きだけどなぁ」
帰り際、
「元気のでる魔法の飴でぇす」
と、お姉さんはフルーツキャンディーを2つくれた。
コンビニでよく売ってる、
一袋200円くらいのやつ。
それでも、美容院を出てからもしばらくの間、
「また来てくださぁい」
と、笑顔で
勢いよく手を振り続けてくれているお姉さんの明るさを思うと、
本当に元気になれた。
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