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明かりも付いていない暗い部屋の中で、僕は長い間、泣き続けていた。
とにかく悲しくて、悲しくて。周りの大気が、人間が、社会が、自分を無理やり押しつぶそうとしているような幻覚に襲われ、度々どうしようもない吐き気と眩暈に悩まされていた。
そしてそれらを跳ね返そうと、無力ながらも必死でもがく自分自身を見て、余計に自分が情けなくなり、虚しさが倍増して返ってくる。
こういう状況を、四面楚歌というのだろうか。今まで体感したことの無い大きな不安の波は、途切れることなく自分の心の海岸に打ち付けていた。
あの交通事故以来、僕と僕の愛する彼女を繋ぐ一本の糸は、残酷な運命によって千切られてしまった。いや、千切られるどころか、もう二度と修復できないくらいバラバラに、こま切れにされた。
もはや彼女と触れることも、他愛ない言葉を交わすことも、今の僕には叶わなかった。
日が経つにつれて、涙を頬に伝わしていくにつれて、彼女との楽しかった思い出が段々と薄れていき、ただの曖昧でぼけた映像になっていく。
それが心から恐ろしくて、僕は他のものを一切目にうつさないようにしていた。
そしてその度に、身の回りにあるもの全てが汚らしく、空虚に見える。自分の存在する意味は、もうとっくに死んでしまっていたのだ。
暗い部屋の中でうずくまって、泣くしかない。
まるでだだをこねて物を欲しがる子どものように、僕の精神はすっかりと退化してしまっていた。
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