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「もう時間?今日は早いね」
「そう思うだけさ。今夜は満月だから、姫様を誘ってみたらどうだ?」
「あいつは仕事だと思うけど…」
仕事仲間は姫様と呼ぶが、別に王族ではない。彼女の名は歌音[カオン]不定期だが、歌を唄う仕事をしてる。そのせいなのか、親しみを込めてそう呼んでいるようだ。
「貴重な時間なんだ、幼なじみなんだし、有意義に使えよ」
「…そう、ですね。考えておきます。じゃあ、お疲れ様でした」
「ああ、流砂に気をつけろよ」
流砂、砂漠にはつきものの事故だ。今月に入って2人飲み込まれたまま、帰ってこない。砂漠化は治まったと言われているが、緑が増える事もなく、人は減ってゆくばかりだ。
砂嵐も起きるが、その予測は出来る。だから予測出来ない流砂は、一番厄介な事だ。へたすると、このオアシスが流砂に巻き込まれる可能性もあるらしい。
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