145人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうしてあんな事‥。」
歩きながら響子は奈々に聞いた。
奈々はしばらくうつむいていたが、ゆっくりと話し出した。
「前に一度‥文具店でボールペンを万引きしようとした所を薫に見つかって‥それ以来グループに入らないと万引きの事をみんなに話すって。」
「何それ!だからってまたそういう事させる訳?あんなやつらの言いなりになっちゃだめだよ!」
響子ついつい怒鳴ってしまった。
「響子は沢田さんの親友だから薫は手が出せないからいいよ。」
「そんな事関係ないよ。」
確かに響子は沢田美奈子とは親友という事で薫は一目置いていた。
響子は次の言葉が出ずにいた。
しばらく気まずいまま歩いていたが、響子が奈々の背負っているギターに目をやり、
「奈々、音楽やってんの?」
奈々は急に表情が明るくなり
「うん!バンド組んでんだ。フォーク系だけどね。」
「へぇ~、そうなんだぁ。聞いてみたいなぁ。」
「今度ライブやるよぉ、見に来てくれる?」
「いついつ?」
「27日!」
「27日?27日かぁ‥」
「ダメなの?」
「私の誕生日でね‥約束しちゃった」
「そうなんだぁ。彼氏?」
「そんなんじゃ‥でも好きな人。」
奈々は笑顔でうなずくと
「おめでと。」
二人は四つ角まで来ると
「私、この先だから」
そう言って奈々はかすかに手を振った。
「うん、頑張って」
響子の言葉に少し勇気が持てた気がした。
.
最初のコメントを投稿しよう!