奈々

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「どうしてあんな事‥。」 歩きながら響子は奈々に聞いた。 奈々はしばらくうつむいていたが、ゆっくりと話し出した。 「前に一度‥文具店でボールペンを万引きしようとした所を薫に見つかって‥それ以来グループに入らないと万引きの事をみんなに話すって。」 「何それ!だからってまたそういう事させる訳?あんなやつらの言いなりになっちゃだめだよ!」 響子ついつい怒鳴ってしまった。 「響子は沢田さんの親友だから薫は手が出せないからいいよ。」 「そんな事関係ないよ。」 確かに響子は沢田美奈子とは親友という事で薫は一目置いていた。 響子は次の言葉が出ずにいた。 しばらく気まずいまま歩いていたが、響子が奈々の背負っているギターに目をやり、 「奈々、音楽やってんの?」 奈々は急に表情が明るくなり 「うん!バンド組んでんだ。フォーク系だけどね。」 「へぇ~、そうなんだぁ。聞いてみたいなぁ。」 「今度ライブやるよぉ、見に来てくれる?」 「いついつ?」 「27日!」 「27日?27日かぁ‥」 「ダメなの?」 「私の誕生日でね‥約束しちゃった」 「そうなんだぁ。彼氏?」 「そんなんじゃ‥でも好きな人。」 奈々は笑顔でうなずくと 「おめでと。」 二人は四つ角まで来ると 「私、この先だから」 そう言って奈々はかすかに手を振った。 「うん、頑張って」 響子の言葉に少し勇気が持てた気がした。 .
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