追憶

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ぼく達は京都で最も賢い移動手段の一つ、つまり徒歩で本屋に向かう。本屋とはいっても古本屋で骨董品のような本たちは意外に値が張る。 暫く歩いたところで萌太くんはいきなり思いもしないことを言い出した。   「いー兄、僕がもしいなくなってしまったら・・・崩子を頼めますか?」   鴨川が赤く染まる景色に見とれていたぼくは咄嗟のことでわけが解らなくてじっと萌太くんを見ていた。微笑みは絶やさずに、けれどその目は本気だった。 「萌太くん・・・?」 「僕はいついなくなってしまうか分かりません。元々生まれは死神です。いくら仕事をする前に逃げてきたといっても、この脚の片方はこの世界ではない一線を駕した世界に踏み込んでしまっているのですから」   「だから・・・頼めますか?崩子のこと」   「萌太くん、なんでそんな大事なことをぼくに・・・?」
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